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私も参加させて頂いたアンソロですが、先日無事発行されてイベントも終了したようです。
今後は通販開始が今月中で、イベントはCOMIC CITY 大阪97(2014/01/12)参加予定だそうで、宜しければぜひぜひ♪
ジェイシェリアンソロジー『Волим те.』
以下、私のサンプル↓
約束
Cross my heart and hope to die, if I do tell a lie.
軽快なリズムに乗って、ジェイクが呟くように歌っている。
絡めた小指がくすぐったくて、シェリーは思わず笑った。
「なぁに、それ?」
「知らないのか? 童謡だろ? 小さい時に歌ってもらわなかったか?」
シェリーはどんな顔をしたらいいのかわからなくて、思わずジェイクから視線を逸らした。
小さい頃――そんな歌に限らず、歌を両親から歌ってもらった記憶などない。シェリーが覚えている両親は背中だけだ。いつも仕事に行く背中だけを寂しく見つめていた。
「ゆーびきりげーんまん、うそついたらはりせんぼんのーますっ、ゆーびきった」
ジェイクが突然絡めた指を上下に振りながら、今度は外国の言葉で歌った。何を言っているのかも意味もわからないが、メロディは先ほどのほとんど歌と同じだったので、外国の同じ歌なのかもしれない。
「どこの国の歌?」
「日本だ。ああ――歌として広まってるのは日本だけらしいな。お袋が英語にアレンジして歌ってくれた」
だから、と続けたジェイクの指先とシェリーの指先はまだ繋がっている。
「お前が知らなくても無理ないな」
シェリーはジェイクのこういうところに泣きたくなる。どうして私の顔を見ただけで、考えていることがわかるんだろう。わかった上でのフォローがとても上手い。
パチパチ、と焚火の爆ぜる音がした。外は吹雪で窓枠が震えるほど風が強い。それでも偶然見つけたこの小さな山小屋の造りはしっかりしているのか、薪が燃えて爆ぜる音が聞こえるほど静かだった。凍ってしまうんじゃないかと思うほど冷えた身体は急速に暖まった。でもそれはきっと焚火のせいだけじゃない。
暖炉の近くの壁を背にジェイクが片膝を立てて座って、その間に入るようにシェリーが前を向いて座っている。小指は絡んだまま放す機会を見失ったままだ。
吹雪の中の山小屋。
――こんな状況には覚えがある。
イドニアで初めて会って、ヘリが墜落した時だ。データを探した後、束の間、冷えた身体をこんな山小屋で温めた。
もう何年も前みたいに思うけど、実際には――シェリーは心の中で指折り数えて出た答えは片手で足る。
あの頃はジェイクがこんなに近くにいることなんてなかった。
こんな、まるで恋人みたいな距離。
シェリーは合衆国に軟禁されて育ったようなものだから、他人との距離に疎い。友達と呼べる同年代の人も周りにいなかったし、恋なんて物語の中でしか知らない。だから、ジェイクとのこの距離が友達として当然の距離なのか、それとも――恋人でなければおかしい距離なのか、シェリーにはわからなかった。
五ヶ月前のあの逃亡劇が幕を閉じて、ジェイクとは顔を合わせないまま帰国した。抗体のための血液だけを置いてジェイクが姿を消したからだ。会う必要も手段もないまま時が過ぎて、Cウィルスの変異に伴う新しいワクチン精製のためにジェイクを米国に招聘することになった。BSAAが常にジェイクの行方を追っていたが、放浪する彼の所在は流動的だった。しかし、急遽どうしても彼を確保せざるを得ない事態が起きた。
アルバート・ウェスカーの息子であることが一部の団体に漏れたらしく、彼の血の価値がどれほど希少か白日の下に晒された。その結果は火を見るより明らかで――合衆国はジェイクを保護のする名目で捕獲することをシェリーに命じた。
シェリーはすぐにBSAAによって確認されている最後の足跡である某国に飛んで――無事再会を果たすことができたが、彼の血を狙う輩がすぐ背後に迫っていたため、奇しくも五ヶ月前の事態の再来となった。
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