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【追記】
これの続きはPIXIVにUPしました!
ちょっとエロくなったのでR18つけるため。
しょーもないSS投下。
【命がけの夫婦喧嘩】
ガッシャーン!
派手な音とともにガラスが砕けた。続いて容赦ない銃声が降って来た。
レオンはキッチンのカウンターの下に潜り込んで首を竦めた。引き出しをまさぐって包丁を握る。
マシンガンを撃ち尽くした隙を狙って、エイダ――自分の妻のいる方向へこちらも容赦なく包丁を投げた。
包丁は正確にエイダの立っていた場所に突き立ったが、エイダは素早く身を伏せて床を奥に転がっているのが見えた。
レオンはすかさず間を詰めるためにカウンターを乗り越えて、エイダの方へ走った――が、エイダが床に仰向けで転がったままこちらに9mmのハンドガンを向けたのを見て、レオンは方向転換してソファへダイブした。ソファに頭から突っ込んだ途端にパンパンと乾いた銃声が耳に届いて、レオンは舌打ちした。
(一体どれだけ銃を持ってるんだ)
ソファの陰に回りながら、一応の声掛けを試みる。
「エイダ!撃つのをやめろ!!謝ってるだろ!」
返事はサブマシンガンの銃弾の雨が降って来て、レオンは身を縮めた。
ソファにいくつも穴が開いて、中の羽毛が飛び散った。白い羽がレオンの頭上を優雅に舞った。
(ヤバイ。本気で怒ってる)
背中を嫌な汗が伝うが、レオンは正直わけがわからなかった。
エイダが怒っている理由がわからない。
理由を問いたいが、きっと理由がわからないという時点で怒りに油を注ぐんだろう。
それはわかっていたから謝ったのだが、返事は柳眉が逆立った殺気のオーラと問答無用の銃弾の雨だった。訓練の賜物で反射で避けたが、一般人だったら確実に死んでるほど容赦のない銃撃だった。
「Honey, are you still alive?」
リビングの扉の陰あたりからエイダの声が聞こえてきた。
ハニー、なんて呼ばれたのは初めてだったが、だからこそ籠められた皮肉に背筋が凍った。しかもまだ生きてる?って何だ。
レオンは返事をせずに移動することにした。身に染みた戦闘技術が声で相手に自分の位置を知らせることを阻む。
そこまで考えてレオンは苦笑いした。
(おいおい、たかが夫婦喧嘩だぞ?)
それなのに生存確率を上げるために持てる知識を総動員している自分に笑いが込み上げる。恐らくエイダも既に移動しているはずだ。
ソファの下に隠してあったハンドガンを手にして、リビングの壁に沿ってドアに向かって忍び足で歩く。
結婚した時に買ったこの家は、なかなか広くて気に入っている。だが、既に銃弾で壁は穴だらけだし、キッチンももう使い物にならないだろう。リフォーム代が嵩むな…と考えて苦笑いした。
――生きていれば、な。
リビングの扉から玄関に続く廊下を覗くと、やはり既にエイダは移動したらしく、静まり返っていた。
廊下を抜けた正面に玄関があり、左側は階段が玄関からリビングに向かって続いている。つまり、左側は壁だ。右側はバスルームやクローゼット、玄関を入ってすぐにもう一部屋ある。
(エイダはどこにいるんだろう)
上に行った可能性もないではないが、きっと一階にいる。右側のドアの向こう側に潜んでいるか、階段でレオンを待ち受けているか――いずれにしろ向こうは逃げるのが目的ではない。
息を潜めて慎重に廊下を進む。主に右側を意識して。
ギシ、と木が軋む音がしたと同時にレオンの頭に警鐘が鳴った。音の方向が頭上だと脳が理解した時には上から影が降って来た。身体に衝撃が走って、背中を床にしたたかに打ち付けた。痛みに顔を顰める余裕もなく、上に乗っているエイダがレオンの頬を張った。痛烈な一撃だった。
「効いた?」
唇に笑みさえ浮かべたエイダは、出会った頃から変わっていない。
「ああ――目が覚めた、よっ!と」
膝をエイダの背中に思い切り叩き込む。怯んだ隙に更に跳ね上げ、彼女の身体を自分の頭上に一回転させ、自分も転がって起き上る。マウントを取られた状態は絶対に避けねばならない。銃を探したが、上から襲撃された際にどこかに飛んだらしい。
既に態勢を整えたエイダは一歩間合いを詰めてくる。手に銃は持っていない。レオンは繰り出される拳を紙一重で避けながら、笑みさえ浮かべる自分の妻を見る。
結婚して自分の妻となった彼女を長い間想っていたように思う。
出会って既に彼女と出会う前の人生よりも長い時間が経ったが、未だに謎が多い。だが、結婚して一緒に過ごすようになってから知ったことも多々ある。
その最たることが――彼女の笑顔は仮面だということ。
彼女の感情の全ては笑顔の下に隠されている。泣きたい時も笑う。怒っている時も――今のように楽しげな笑みさえ浮かべている。
怒ればいいのに。何も言わずに、表情にも出さずに、攻撃だけするんじゃなくて――もっと怒ればいいのに――俺にだけは。
レオンは不意に込み上がってきた怒りに任せて、エイダの身体に向かって頭から突っ込んだ。
自分より随分軽い彼女の身体は簡単に浮き上がって、抱えたまま壁に叩きつけた。遠慮はしなかったから、一瞬息が詰まったのがわかった。
だが、すぐに足をレオンの腰に巻きつけて首に腕を回した。
普通の時ならば大変美味しい状況だが、レオンはすぐに絞められた首を解放するべくもう一度彼女を壁に叩きつけるハメになった。だが、今度はしぶとかった。
腕が緩む気配がないので、今度は壁に飾ってある大きな振り子時計に向かってエイダを叩きつけた。表面のガラスが割れる音がして、割れた破片が全身に降って来た。腕が緩んだ隙に彼女の腕をかいくぐり、身体を離す。
ガラスにまみれて呻いているエイダを見下ろして、レオンは挑発するように掌を上にして手招きした。
「どうした?もう終わりか?来いよ」
不敵に浮かべた笑みは成功しただろうか。
ガス抜きが必要ならいくらでも相手してやる。夫の務めだろ?もっとも、
――命がけだがな
下から睨み上げたエイダの瞳にいつもはない感情が籠った。一瞬消えた笑みに妙に安堵しながら、彼女の攻撃を待った。
エイダの身体がバネ仕掛けのように起き上ったと思った瞬間、顔の両側を衝撃が襲った。
置時計の横に飾ってあったガラス細工の瓶を両側から叩きつけられ、ガラスが割れる音が耳朶を貫いた。眩暈がした瞬間、エイダの容赦ない頭突きが襲って、口の中に鉄の味がした。
「思い知った?」
口の端を少し上げただけの笑みを浮かべた彼女も肩で息をしている。
レオンはチラリと視界の端に映ったものに飛びついた。同時にエイダが足元からナイフを抜くのが見えて、滑るようにレオンの懐に入ってこようとして――一瞬の攻防だった。
飛びついて拾った銃口をエイダに突き付けると同時にレオンは自身の喉元に冷たい感触の刃先が押し付けられたのがわかった。
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