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ハッピーハロウィン【クリジル】

去年書いたものが出て来たので!
元ネタは某少女マンガですねwww(わかるかな)

クリジルはね、ワタシ的にはこういう相棒という枠の中でお互いあがいてる感じが好き(*´▽`*)






クリスは署内の喧騒に溜息を吐いた。
今日は世間がクリスマスや感謝祭の次に浮かれているであろうハロウィンだ。詳しい起源などは知らないが、子供の頃は友達の家を回ってお菓子をもらうのが定番だったし、学生の頃はパーティーなどがしょっちゅう開催されていた。この時期は店先が一斉にハロウィン一色になる。当日には地域によってはパレードが開催され、色んな仮装をした人々が街に溢れる。だが――
(仮にもL.P.D(ラクーン市警)内でその恰好は何だ!?)
普段は地味で味も素っ気もない殺伐とした雰囲気の署内には様々な仮装をした人々が行き交っている。
原因は例のイベントだ。
警官は人気の職種に思われがちだが、危険と隣り合わせで銃社会のアメリカではさほどでもない。しかも近年の猟奇的な事件のあおりを受け、年々志望者が減っている。そこでその事態に危機感を抱いた署長がイベントと称してハロウィンに絡めて子供たちを集めて一日署内見学会のような企画を出したらしい。
署内の緊急性のない職種は仮装すること、というお達しは1ヵ月ほど前から出ていたが、クリスは生憎"緊急を要する職種"なのでその苦行から逃れられてホッとしていたのだが――

奥にあるS.T.A.R.Sの部屋のドアが開いたのが見えて、クリスは一瞬喧騒が全て消えた錯覚を覚えた。実際うるさかった署内は一瞬静まり返った。そのくらい、彼女は目立っていた。
ドアから出て来たのは恐らくマリーアントワネットの仮装をした――ジル・バレンタインだった。
狭い署内の通路をドレスが邪魔して通れないんじゃないのか、というほど膨らんだスカートに頭には羽根のような飾りがついている。綺麗に化粧された顔は陶器のように滑らかで白く、その顔の中心に色づく口紅が凛とした印象を作っている。もともと顔だちも整っている彼女は正しく――息を飲むほど美しかった。
しばらくぽかんと口を開けて凝視していたクリスはこちらを見たジルと視線が合った。途端にジルが目を細めて勝気そうに笑った。言わなくてもわかる、いつのも表情で――我に返る。

――見惚れた?

唇だけで遠くにいるクリスに伝える表情は面白がっている。

――馬鹿言え。

クリスも同じく唇だけで顔を顰めて返す。
顎を上げて鼻で笑ったジルはこちらに一瞥を投げて歩き出した。途端に群がる男どもにクリスは舌打ちしそうになった。
「おー、ジル化けたじゃねぇか」
後ろから肩に手を置かれて振り返るとバリーが立っていた。
「何でS.T.A.R.Sなのに仮装してんだ、あいつは」
苦々しげに言うクリスにバリーが笑った。
「S.T.A.R.Sの中から女子をひとり出せって言われたらしいぜ。で、今日の勤務形態で一番支障のないアイツに白羽の矢が立ったってさ」
「断ればいいだろうに」
「アイツが断ればレベッカだったからなぁ」
バリーの言葉でクリスはああ、と合点がいった。普段なら絶対断るであろう彼女が受けた理由はそれか。そういう姉御肌な一面が確かにジルにはある。
「だからってあんなに気合い入れなくても…」
思わず漏れた本音にバリーのにやけた髭面で我に返った。てめぇなんだ、と肘打ちをかましながらS.T.A.R.Sの部屋に入る。ドアを閉める直前に後ろを振り返れば他部署のピーターパンのような恰好をした男がやけに熱心にジルに話しかけているのが見えた。自分でも意外なほどの靄のかかった気持ちを断ち切るが如く、クリスは乱暴にドアを閉めた。

ジルとは同じチームメイトだ。ラクーン市警内に設立されたS.T.A.R.Sという特殊部隊、アルファチームに二人とも所属している。クリスより2歳年下の彼女との付き合いは作戦行動でお互いの呼吸を読むのにさほど苦労しない程度には長いし、彼女の戦闘能力には定評があり、クリスも信頼している。仲間、という括りの中で彼女は"戦友"であり"友達"だ。どちらかと言うと男友達のような気楽さがある。それは彼女の性格によるところが大きいのかもしれない、と今までは思っていたが、どうもこの頃は彼女の方でその枠を超えないように防御線を張っているのかもしれないと気づいた。
S.T.A.R.S内では恋愛は特に禁止されていないが、揉めれば離されるだろう。もしかしてそれを憂えているのか、と考えてクリスは苦笑する。意外に俺も自信家だよな。
嫌われてはいないが、きっと男扱いもされていない気がする。
そして自分もジル・バレンタインという存在を他の男と喋ってるのを見て嫉妬する程度には気にしている自覚はあるが、何を犠牲にしてでも手に入れるという域には達していない気がする。
仲間としてのポジションの方が今は大事なのかもしれない。

だが――

クリスは未だにしつこくまとわりつくピーターパンを見かけて一気に機嫌が急降下した。
(確かにジルは美人でスタイルが良くて胸もデカいが、性格は軟弱なお前がついて行けるような奴じゃないんだよ)
腕組みしてイライラしながら机の上の灰皿にタバコを押し付ける。
これじゃ仕事にならねぇ――
イライラが限界に達した時、クリスはふとあるものに目を奪われた。あれは――



**

ジルは隣の男がやけに腕を触ってくるのが鬱陶しかった。
ドレスが大仰なので歩くのも一苦労だ。狭い所を通る時はスカートを捲らねばならない。その都度その男は手伝おうとして腕を取る。やんわり外してもしつこい。
いい加減しろ、といつものジルなら一喝するところだが、生憎今日は愛想を振りまく仕事中である。こんな恰好をしたのも失敗だったと後悔したが後の祭りだ。一番見て欲しかった人には見せれたが、それも一瞬だった。
一瞬だったが、確実に自分に見惚れた顔を見れたから満足だった。
いつもは馬鹿なことしか言わない"仲間"だが、たまには自分も"女"だと――しかも"とびきりいい女"だと知らしめたい。そんな想いもあって引き受けたこの役もこの男のせいで台無しだ。
舌打ちを何度も我慢しながらジルが署内を歩いていると、階段のところに向こうを向いた後ろ姿が見えた。服はS.T.A.R.Sの制服だったが、何かマスクを被っていて顔も見えない上に後ろ姿だったがジルはすぐにわかった。

――クリス?

背格好と雰囲気だけでわかる。そのことにジルは溜息を吐きたくなる。同じチームで仕事をする仲間だ。それ以上でもそれ以下でもラインを越えればきっと面倒になる。それはわかっているのに――
ジルが近づいて行くと、クリスが振り返った。ライオンか何かのマスクだった。そういえば誰かが用意した衣装の中にあったような気がする。様々な仮装の中でそのマスクだけの仮装は特に目立つわけでもない。
何してるんだろう、と怪訝に思っていると、クリスが人をかき分けつつジルの方へ歩いて来て、前まで来るとジルの手を取った。
「え?」
戸惑って声を上げるとマスクの奥の目が細められた気がした。
そのまま取った手をクリスは口元に持って行って、マスク越しに手の甲にキスを落とす。
(な、なに?)
いつにない振る舞いにジルは戸惑った。
「とても美しい――この野獣にふさわしい――」
その瞬間周りの空気が変わった気がした。ジルも目を見開いてクリスを見上げた。

――美女と野獣!

目立つ仮装じゃない。マスクを被っただけだ。でも周りの視線は全て持って行ってしまった。ジルの恰好を逆手に取って自分がエスコート役を買って出たのだろう。きっと隣の男に嫌気を差しているジルを見かねて――
ジルは微笑んでクリスの隣に立って腕を組んだ。
「考えたわね」
小声でジルが言うと、こちらを見返す目が得意げに輝いて思わず笑った。
ちらりと振り返ると先ほどの男は呆然と立ち尽くしている。その顔がおかしくてジルは更に笑えて、慌てて扇で顔を隠した。
「でもこれで結構噂になるかもよ」
一緒に腕を組んで歩きながら言うと、くぐもった声が聞こえた。
「――い」
「え?」
聞こえなくて聞き返すと、クリスはこちらへ顔を屈めた。
「別にいいだろ。悪い虫が寄って来なくなって」
ジルは笑いながら近くにあったクリスの顔――マスクだが――を持っていた扇で叩いた。
「全然寄って来なくなるのは困るわよ!適齢期を逃したらクリスが貰ってくれるワケ!?」
小声での攻防はS.T.A.R.Sのドアの前まで続いていて、ドアを開けて大仰な仕草でジルを部屋の中へ入れたクリスは外の観衆へ手を振ってドアを閉めた。視線を集めた二人の退場にワッと全員が拍手した。閉める刹那、ジルの耳に届いたクリスの言葉は拍手にかき消された。
「え?何て?」
慌てて聞き返したが、クリスはマスクを脱ぎ捨てて椅子にドカッと座って「何でもない」と答えない。
「今度捕まってももう助けないぞ。早く着替えて来い」
素っ気なく言われてジルは頬を膨らませた。もういいわよ、とばかりに更衣室へ向かう。更衣室のドアを閉める直前、バリーのからかうような声が聞こえてきた。

――「ジルが男にちやほやされて仕事にならなかったくせに何気取ってんだ」

てめぇ、うるせぇぞ!というクリスの怒声はドアを閉めたら聞こえなくなった。しかめっ面だった自分の顔が緩むのがわかって、ジルは慌てて顔を引き締めた。
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